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ニュース・コラム

山田マミのやっぱり、パリが好き

山田マミのやっぱり、パリが好き

フランス・パリ在住の山田マミさんが、現地発信の最新ダンス情報をタイムリーにリポート!
ダンスだけでなく、ワイン、フェスティバル、市場などなど、パリっ子たちの日常生活も、
山田マミさんによる独自の視点でお伝えします。動画によるダンス映像の配信も見所です!

台風の被害に遭われた方々に、こころよりお見舞い申し上げます。

パリ・オペラ座のビデオダンス、トワジエームセーヌ3ème scèneが面白い

https://www.operadeparis.fr/3e-scene/breathing

9月から上演されている杉本博司演出の「鷹の井戸」。これをイメージした杉本博司演出のビデオダンス「ブレシング/Breathing」が素敵!ダンサーとしてのオレリー・デュポン健在です。
撮影場所の小田原はこんなに美しかったのかと改めて思う。小田原=蒲鉾しか思い浮かばなかった私には衝撃的であった。

もう一つ「Grand Hôtel Barbes」もいい。
https://www.operadeparis.fr/3e-scene/grand-hotel-barbes
ダンサーは、バレエもコンテもヒップホップもできなくてはならない時代になりつつある。監督はRamzi ben Sliman

新鋭振付家クリスタル・パイト、パリ・オペラ座で世界初演

世界で注目の的となった新鋭振付家クリスタル・パイトが、パリ・オペラ座で新作「ボディ アンド ソウル」を発表。噂通りすごかった。
パリ・オペラ座デビューの衝撃的な作品「ザ・シーズンズ・カノン」を彷彿させる群舞の迫力の中に、日常の風景を差し込むことで、集団と個人が浮き上がる。そして個人の感情は集団や日常の流れの中に消し去られていく。そんな情景にジーンときていたら、第3部は昆虫世界。キンキラキンの洞窟の中でアリの集団が踊り、けむくじゃらの人がテディ・ガイガーの「ボディ・アンド・ソウル」に乗ってイエイイエイと踊る。この流れがよくわからなかったけれど、大受けでした。
写真はカーテンコールで覆面を取った昆虫衣装のダンサーがずらり。中央の金色のズボンの人がタケル・コストで地下の王者。
***追記***
11月23日の最終公演日に、ここに出演していたミュリエル・ズスペルギーとアレッシオ・カルボーネが引退しました。二人とも円熟期真っ只中なので、引退が惜しまれるけれど、今後新たな道での活躍を期待します。

今年オペラ座は350才。これを記念して本が出版されている。
当時のオペラ座内部の様子がイラストや写真で紹介されているのだけれど、レパトリーや上演作品一覧表があったらもっと面白かったのにな、と。

パリのお散歩

パッサージュをいつもと違う方向に歩いてみたら、グレヴァン博物館の出口発見。曲がり角にあるから気がつかなかった。

このパッサージュもいつもとは違う時間帯に来てみると、様子が全然違う。」

イギリスパブかな、ヴィクトリア・ステーションという名のレストラン

羽のついた狐の剥製がウインドウに飾ってある。中は暗いし、客も少なそうだし、ちょっとキモい。これがカフェだとやっとわかったので、いつか勇気を持って入ってみたい。

餃子バー。フランス人が焼いている。あ~いい匂い~

あら、パッサージュ53だ! 星付き日本人シェフ佐藤さんで有名なレストラン。今まで何度もここを通っているのに全く気がつかなかった。看板ないし。 赤いジャケットの女性がメニューを見ているところがレストラン。正面から写真を撮りたかったのだけれど、店内丸見えなので、食事中のお客さん(この日は日本人がほとんどだった)の手前、遠慮しました。

準備中はこんな感じ。まもなく引っ越すという噂もある。

オペラ広場に面したカフェ・ド・ラ・ペの建物は、建物正面のお掃除中。右横に見えるのがオペラ座ガルニエ宮。

あら~ここも工事中。日本人レストラン街に向かうプチシャン通り。歩道を広くするのか、自転車専用レーンを作るのか。車道が1車線になると渋滞するだろうなあ。パリは真剣に自転車天国を目指しているのね。何しろ公害は北京を上回るともいわれているからね…

自然を楽しむ生活も悪くない

パリもそうだけれど、街の中心地から車か電車で15分も移動すれば、田園風景が広がる。東京のように1時間電車に乗ってもまだ東京のビル群の中ということはない。

牛とも仲良く慣れそうだし。

今住んでいるのはパリから列車で3時間半のところ、クレルモン=フェラン。フランス新幹線のTGVは通っていない。山とカーブが多いから無理なんだって。長閑な田園風景というか、だだっ広い景色を眺め、携帯電波が届かない地域を通り、横揺れに酔いそうになりながら、山が見えて到着。
我が町は結構でかい。一応県庁所在地だし。住んでいるのは市内だから、日常生活に不便はない。中心街まで徒歩20分の登り坂というハードルさえ乗り越えればの話だが、これも老化防止のスポーツと思えば許せる。街の中心地は火口だったと聞いた。休火山?いや、死火山であることを祈る。

不精者なので家に籠っていると、ツレが心配してハイキングに誘ってくれた。もちろん車での移動だ。家から45分ほど走ると山。ここはマシフ中央高原。フランスの中央部の小高い山が連なるところで、ユネスコ無形文化遺産に登録されている。ヴォルヴィックのミネラルウオーターが作られているのと同じ地域で、フランスでは唯一の軟水地域。その理由はプーゾランPouzzolaineという岩石。火山が爆発して流れ出た溶岩の一種らしい。日本語では何というのかわからん。

ハイキングコースの出発地の説明がわかりやすい。文字を読まなくても理解できるのはありがたい。

これがその地層

紫色と黒があって、この辺りは紫色。家庭菜園にはもってこいのリッチな土なのだと。セメントとか道路の舗装にも使われる便利な鉱石なのだ。雨はこのフィルター役の地層を通るから、この一帯は軟水なのだと。軟水の中で生きてきた日本人には住みやすい地域で、パリから引っ越してきた日本人の友人が、お肌ツルツルになったと喜んでいた。

この石で敷き詰められた駐車場は綺麗だこと!
ユネスコ無形文化遺産に登録されたからかな、最近整備されたようだ。

自転車やバイクで自然を荒らされないようにと、柵が設置されている。ここを通らなくてはいけないらしい。何しろ無形文化財だからね。結構細身にできている。太ったら通れないってこと?

ここまでこなけりゃ見れないアートもある

この牛さん、美人だわぁ

天気が良くて気持ちの良いハイキングを終えて帰路に着く。急ブレーキに驚けば、目の前をイノシシが横切り、その後ろを猟師が走って追いかけている。こんな光景パリでは絶対に見られない。

ハイキングの基本は、早起きして出かけること。日が落ちると危険なので、午前中が良い。特にキノコ収穫は競争率高いので、早いほうがいい。

今日はこんなに収穫があった。

素人には信じがたいが、これが結構美味しいキノコ。

そしてお腹が空いたらレストランへ。これも楽しみの一つ。
観光地の3つ星ホテルのレストランに行ったら、混んでいるのでとあっさりと断られた。20名ほどの団体が入っているだけで、それ以外のテーブルは空いているのに、面倒くさいのか、材料がないのか、ノンの一言で終わり。すみませんの一言もない。サービス精神皆無。客の腹ペコ状態などお構いなしだ。
そこで、通りすがりの街のレストランに入った。すでに午後1時半を過ぎて、デザートを頬張る客多数。席に着くなり出てきたのが、水とピッシェの赤ワインで、「食前酒は何にしますか」これ以外の会話なし。ここも人間味のないレストランなのか…

いつ注文を取りに来てくれるのかと待っていたら、「どうぞ~」と山盛りのサラダ。どうやら昼は日替わり定食だけらしい。メインは15センチ四方、1センチの厚みがあるハムのステーキとお米。食べきれずに半分残したら、「あら、焼き方が悪かったのかしら、美味しくなかった?」と心配そうに覗き込む。「いやいや、お腹いっぱいではいりまへん」
今度はチーズの盛り合わせが出てきたので、「え~、まだあるの?」と思わず言ったら、「この後デザートもあるのよ」「デザートは別腹だから大丈夫」「私もそうよ」と会話が弾んだ。こんなウエイトレスとの何気ない気さくな会話が好きなのだ。
量は2倍、値段は格安の田舎のレストランといい、イノシシと猟師の追いかけっこといい、キノコ収穫といい、田舎も結構エキサイティングだ。

驚きの農業祭、パリとは違う!

パリでは毎年2月下旬に農業祭が開かれて、大統領も訪れる盛大なイベント。動物園とはちょいと違う動物(つまり家畜)に出会えて、グルメも楽しめる人気の農業祭。これは都会生活者のためのものだと思っていたら、地方都市でも行われていると聞いて行ってみた。行ってびっくり、人も多いが牛も多い。通路は牛と人でごった返していた。人も歩けば牛に当たる。。。
よく考えれば、会場となったクレルモン=フェラン市があるオーヴェルニュ地方は、畜産農家が盛んなところなのだから、マジな売買の市場だったのだ。ルンルン気分で「牛さん、羊さん、可愛い!」なんて言って喜ぶ場所ではなかったのだ。

会場に入ってから展示がある建物に行くまでずらりと並んだ農作機。私には何をするものなのかさぱりわっかりましぇ~ん

日本のメーカーも出店している。

そして最初に見たのが牛のコンクール

実況ビデオ付きで、一頭一頭紹介している。どうやら牛はお尻で評価するらしい。

インパクトありすぎ

牛も大変だ。全ての牛が紹介されるまで、じっとしていなくてはならない。機嫌を損ねて鳴いたり動き出す牛もいるし、下の方もナチュラルに落ちる。牛もでかいが、XXXもでかい。

会場内のブースも熱い。熱の入った交渉があちこちで見られる。パリとは違う。
牛はこんな感じで囲いに入れられるらしい。牛ってでかいのね。スーパーで売っているステーキ一枚の大きさからは想像もできないほどだ。

いた~牛!この建物全部牛だらけ。ここはホルシュタインばかり。

ここには別の種類がいる。いろいろいるのね~

シメンタル、ノルマンディ、タランテーズ、種類ごとに名前が表示されているのでわかりやすいが、いちいち覚えていられないくらいたくさんの種類がいるのだ。

優勝メダルが4つもある。この牛さん、優秀なのね。

この子も4つ。
すごいなあと興奮していたら、何やら膝の後ろが生暖かく、何かを感じる。びえ~牛のふん引っ掛けられてる~!

牛はでかい。お尻の位置も高い。そこからぼたぼたと落ちるから、跳ね返りが膝にかかるのだ。パリでは犬の糞に気を付けろと言われていたが、ここでは牛のふんだったのだ。キャイ~ン

子牛もいる

見つめられても困るんだけど・・・

世話をする方は大変だ。餌をやり、あちこちで落ちるフンを片付け、ダダをこねる牛をなだめ、これが3日間続く。

そうか、お乳も絞ってあげないといけないんだ。せっかくならしぼりたてを飲ませるスタンドを作って欲しいのに、捨てているみたいでもったいない。

羊もいるで~

狭い場所に入れられて、ひたすら草に顔を突っ込んで食べるだけ。3日間の辛抱よ~

羊は臆病者で、触ると飛び上がって逃げてしまう。カメラを向ければそっぽを向いてしまう。この4匹だけだったよ、カメラ目線をむけてくれたのは。その後すぐに逃げちゃったけど。
それにしても、いろんな種類があるのね~、この子たち、お顔真っ黒。

あっという間に閉館時間になってしまい、馬は見られなかった。パリと違ってグルメコーナーはなかったけれど、真剣勝負のエクスポは見甲斐があった。また来年~!

ところで、フランス人について。人にもよるけれど、難しい交渉も、ちょっとした受け答えで、和気藹々と解決することがある。フランス人は、結構ユーモアのセンスがあるように思う。ただ、これをこなすには、やっぱりフランス語がある程度できないといけないわけで、外国人にはちょっとハードルが高いかも。
フランス人が冷たいと言われる理由の一つに、フランス語が通じないと相手をしてくれないと言うのがあるが、それはその人がフランス語以外を話せないからなのだ。私がフランスに来たばかりの頃は、「フランス語ができないのなら出て行け!」みたいなことを言われたことがあるが、今では英語を話せる人が増えている。英語を話せることが一つのステイタスでもあり、アメリカに憧れるフランス人が多いように思う。
フランスに旅行するからといって、旅の辞典などでフランス語を丸暗記して、それが相手に通じたところで、ペラペラとフランス語で返されたらお手上げだから、そんな無駄な努力はせず、「すみません、フランス語ができないんですけれどぉ、英語でいっすかぁ」とちょっと低姿勢で聞くと、にっこり英語で答えてくれることがある。タカビーに出ないことが肝心。店に入ったら、すかさず「ボンジュール」と店員に挨拶しよう。挨拶は大事で、これをするかしないかで店員の態度が大きく変わる。日本では当たり前の「無言で買い物」はフランス人の一番嫌うところ。でも、日本文化大好き人間が多いから、安心して旅行しなはれ。

今月の写真

札束が欲しければ…

ここを通るたびに思う、この塀よじ登れそうだよね。
ここは造幣局。住宅街にあって、塀もそんなに高くないし、人通りもないから、登ってみたくなるけれど、実際にやったらすぐに捕まるのだろうなあ。そしてニュースに流れるのだろうなあ「日本人の女が造幣局の壁をよじ登り…」って。やめとこ。

お悔やみ

10月7日 ミエ・コッカムポーさんが亡くなられました。日本とフランスハーフで、自身のカンパニーK622を1998年に設立して、ダンサー、振付家として活躍していた。冥福をお祈りします。

10月10日ユゼス・ダンスフェスティバル(現メゾンCDCNユゼス)創立者のディディエ・ミッシェルさんが亡くなられました。多くの若手振付家を発掘し、何もなかった小さな田舎町ユゼスをダンスの街にした功労者。心より冥福を祈ります。

山田マミ プロフィール

幼少よりダンスを始め、80年代はアメリカに没頭するが、今は亡きダンス・ア・エックスでローザスの「オットーネ・オットーネ」を観て、ヨーロッパの歴史の深さに圧倒され、フランスに移住。しかし、言葉の壁に阻まれ、英語圏への脱出を計画。ところがその矢先、腹ぺこで歩いていた私に「ヴォワラ、マドモアゼル」と林檎を差し出してくれたおじさん。レストランに仕入れる林檎が1個足りなくなってもいいのかしらと心配しつつも感動!もしかしたらフランス人ってすっごく優しいかも?脱出計画は一挙に吹っ飛び、フランス定住を即決める。住んでみたら奥が深いフランス生活。1年が2年になり、あっという間におばさんになった。パリジエンヌを長年やっていたが、環境を変えるのも一つの経験と、地方都市に移住。山が見え、庭のある生活は新鮮だけれど、やっぱりパリが恋しくなる。イベントはたくさんあるし、人はうじゃうじゃいるし、デモに暴動、スリに騒音とエキサイティング。我が身を守るには、ボケている暇はない街なのだ。時々出没するパリで再発見をして、やっぱりパリが好き~!