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山田マミのやっぱり、パリが好き

山田マミのやっぱり、パリが好き

フランス・パリ在住の山田マミさんが、現地発信の最新ダンス情報をタイムリーにリポート!
ダンスだけでなく、ワイン、フェスティバル、市場などなど、パリっ子たちの日常生活も、
山田マミさんによる独自の視点でお伝えします。動画によるダンス映像の配信も見所です!

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ストに始まり、ストに終わった12月

今月の話題と言ったら、スト以外ないでしょ。
スト、つまりストライキ。フランスでは年に何度もあるので、またか、という感じだったのだが、今回は特別。何しろ年明けまで続いちゃいましたから。

12月5日、スト初日。パリ市内の交通網はほぼ寸断され、メトロの多くの駅はシャッターが閉まっている。
この日は事前情報をキャッチしたフランス人の多くが有給休暇を取るなどしたからか、自動運転のメトロ14号線はガラガラ、街はスカスカ。商店にはフランス人はほとんどいなくて、なぜか日本人が来る。ストがあることを知らずに来た旅行客に「スト初体験です」と言われたときには驚いた。平和国ニッポン万歳!エッフェル塔近くのホテルからオペラまで歩いてきたとか、旅行会社がバスをチャーターして郊外のホテルから中心地まで送ってくれたけど、帰りはバスがないので、どうしようかしらなどと笑いながら呑気に話している日本人を見ると、この先無事に日本まで帰れるのかしらと心配になってしまう。美術館の多くが閉まっているし、街をぶらぶらしながらお買い物しかすることしかできないらしい。
でもね、パリって歩くと面白いんですよ。メトロに乗って予定通りの安・近・単の行動をするより、ぶらぶら歩きで思わぬものを発見!ということもできるかも。

私もこれで行列のできるパン屋を発見。場所はオペラ通り。いつもならメトロで素通りするところ。

朝9時前から行列できている!

おお!ここはセドリック・グロレの店だった。2017年に世界最高のパティシエに選ばれて、ムーリスホテルのシェフ・パティシエだ。よく見れば、店内狭いから客が外にはみ出しているわけで、わざと店内を狭くする造りが気に喰わないけれど、美味しそう。いつか買ってみようと思う。2階はサロンになっている。

12月5日か始まったフランス全土の大規模ストは年金改革に反対する抗議で、公共交通機関が麻痺し、学校、美術館や劇場の多くが閉鎖した。メトロはシャッターが閉まり、かろうじて動いているバスはぎゅうぎゅう。もちろん道路は渋滞で、苛立つ運転手のクラクションでうるさいの何のって。歩くのが一番早いです。まあ、歩ける距離ならの話ですけど…。

広場に集まり始めたストライカーたち。これからパリ市内を練り歩くのだろう。

複雑なフランスの年金制度を一本化しようとしたから、優遇制度を受けている公務員や鉄道関係が先頭に立ってストをしたのだ。優遇制度とは、主に肉体的、精神的に過酷な職業の人は早期退職ができるというもので、特典も考慮に入れて入社しているわけだから、それが突然なくなるとなると将来の設計が崩れるものね。そりゃあ怒るわ。
しかし、政府は数年先には年金が多大な赤字を抱えるのが明確なので、改革を強行する姿勢。年金を少しでも多く受け取るために、長く働いてくださいの一点張りで、それが64才。そのうち67才になるという噂もある。
現在は41年働けば満額の年金をもらえて、41年未満だと満額の50%しかもらえないことになっている。62才で定年退職したければ、21才から働き始めなくてはならない。私のように21才過ぎてから入国した外国人には、どう考えても年金満額受け取りは不可能なので諦めていたが、配偶者が新しい制度の被害を被るとなれば真剣になる。以前に年金事務局に問い合わせたら、私の場合85才まで働かなくてはならないと言われて目が点になった。無理ですよ、そんなの。
年金は給料から天引きされるものなのに、会社がちゃんと手続きをとっていなかったのか、10年間未払いなので50%と言われて泣いていたフランス人の友達がいる。給料明細はちゃんと確認しなくてはいけないのだ。

さてそのスト。予想を超えた長期化で、年末まで続いた。1995年にも大規模ストがあったけれど、クリスマスは最大のイベントだからと、クリスマス前には収拾したが、今回は恐れ多くもクリスマスも新年も蹴散らして、ストを続行している。政府も強行姿勢なら、スト側も負けない。ここまで来れば、ストを応援しちゃいますよ。何しろ無給でストをやっているのだから。それだけみんな必死なのです。

でも、郊外に住む人は大変だ。夕方になると仕事そっちのけで電車の時刻をチェックしている。歩いて帰れる距離ではないので、最終電車を逃したら帰れなくなてしまう。郊外の高級住宅街の一軒家と鼻高々だったおばさん、今は目が釣り上がっている。気持ちはわかるが、仕事はちゃんとしてほしい。その人の分がこっちにまわてくるからムッとする。でも血相変えていて怖いから、文句は言えない。

私は1995年の3週間にわたる大規模スト経験者なので、その時の教訓を生かして、何某かの方法でパリ中心地に行ける場所に引っ越した。それが大正解。いつもより20分ほど早く出れば、夜中までメトロが走っている。
1995年のストは凄かったですよ~!交通機関が完全麻痺で、3週間メトロもバスも全くなかったのだから。当時パリ北東部の郊外に住んでいて、スト初日にパリ南西部のエッフェル塔の近くで仕事を終えてメトロの駅に行ったら、係員がシャッターを閉めているので慌てて聞いたら、「ああ、今最終メトロが行ったばかり。このあとの電車はないですよ」
びえ~!!!パリの端から端まで、斜めに横断するのか?とクラクラしながら4時間半かけて家に歩いて戻ったのだった。当時はGPSどころか携帯電話も高級品でインターネットも普及していなかったから、家に戻る道を見つけるのは大変だった。翌日からは2時間かけて歩いて出勤、帰りも徒歩。上司が自転車を貸してくれたのだが、住んでいたのが高台だったので、出勤は自転車で下り坂をまっしぐらで30分、しかし帰りは…登り坂2時間!自転車通勤初日で腰を痛めて、翌日さっさと自転車を返した。これなら歩いたほうが早いし楽だ。治安の悪いところを通らなくてはならなかったが、みんな歩いていたし、悪い奴らも疲れていたのか、疲れと怒りを乗り越えたジョークを飛ばしながら、結構明るく歩いているフランス人を発見する機会でもあった。

これからパリに住もうという方、パリで働くのなら、家賃が高くともパリ市内に住むべし、です。
1995年当時は、セーヌ川運行船が唯一の動く交通機関で、しめしめと思ってストの真っ最中に引っ越したのだが、乗ってみたら船内は満席で、甲板に立つしかなく、真冬の寒い時期にセーヌ川の風をまともに受けて頭の芯まで冷え切って一駅でリタイアー。現在は自動運転のメトロ1号線と14号線が100%通常運行してくれるので、何の問題もなく中心部に行ける。交通網の心配がないというのは、本当に助かるのだ。
パリ市内でもメトロもバスもなくて、毎日1時間歩いて通勤する人もいるから、ロケーションは大切だ。

アドバイス:物件は交通の便をよく考えて

ところで、パリ・オペラ座もストやってます。12月5日からずーっと。

今夜公演を見にいくはずだったのに、ご覧の通り明かりは消えて、閑散としたオペラ座ガルニエ宮前。
11年ぶりの上演だった「ライモンダ」も、エレオノーラ・アバニャートの引退公演でもあったアンジュラン・プレルジョカージュ振付の「ル・パルク」も中止。「ライモンダ」は初日の12月3日だけ、「ル・パルク」に至っては全く日の目を見ずに終わってしまった。オペラ座学校のデモンストレーションや、オペラなどと合わせて63公演が中止で、損失額は12万3000ユーロ、日本円で約14億7千万円!そんなに儲けていたのかと思ったが、アーティストへの支払い、建物維持費や製作費などで財布は火の車らしい。この損失で来年度の上演が危ぶまれる作品もあるという。
しかし、64才まで踊れというのは、ちょっと無理なのではなかろうか。森下洋子さんは現在なお現役で活躍されていらっしゃるが、彼女は特別。ダンサー全員がここまで踊れるとは思わない。ロシア人が「ロシアではダンサーは37才が定年。フランスの42才定年に驚いていたが、これが64歳になるとは!」と言いながら目を回していた。
ダンサーがストをして、デモ行進するのはパリ・オペラ座の歴史上非常に珍しいことで、ガルニエ宮前ではダンサーが「白鳥の湖」を、バスティーユオペラの前ではオーケストラが演奏をして、改革反対をアピール。

https://www.youtube.com/watch?v=oVueDU8uw1I

https://www.youtube.com/watch?v=ys3TsyIDyJU

それでも政府は64才定年を曲げない。この先どうなるんだろう、オペラ座。

それでもやっぱりクリスマス

不況にストにジレ・ジョーヌの暴動と、ボロボロのパリだけれど、それでもやっぱりクリスマス。

シャンゼリゼ大通り

凱旋門の対面にあった大観覧車がなくなって、ちょっと殺風景。それでもやっぱりシャンゼリゼは美しい。

メトロを出て真っ先に目にしたのが、自転車屋台のクレープ屋。ここで足止めを喰らいそうになった。いい匂い~

今年も赤が基調のイリュミネーション

ディオール。ここは昔銀行だったような、、、。一時は自動車会社のウインドウが立ち並ぶシャンゼリゼだったけれど、トヨタもなくなって、ファッションブランドがずらりと揃った。家賃はべらぼうに高いし、毎週土曜日の暴動で店を維持するのが大変らしい。

ブルガリ

いつも行列ができているヴィトン

暴動で壊されたフーケッツ、再開!

ラ・デュレ

シャンゼリゼに唯一残る車のショーウインドウはルノー。クラシックヵーで客を引き寄せる。

2階に上がれば、本物のレーシングカーに乗ることもできる、もちろん動かないけれど。
ルノーといえば、ルノー・日産・三菱のカルロス・ゴーン元社長の日本脱出劇には驚きました。

レペットはなくなって、別の店になっていた。入れ替わりが早い。

テュイルリー庭園のクリスマス・マーケット

凱旋門から降りてきたら、そのままコンコルド広場を突っ切って、テュイルリー庭園のクリスマスマーケットを覗いてみよう。

クリスマスなので、当然クレッシュがあります。キリスト誕生場面。25日前だけど、キリストすでに誕生しています。

動物王国は人気スポット。いろいろいるからねえ。

スケート場もある。

サンタの館。スリラー館のような、そうでもないような…

サンタ電車。驚くほど狭い場所を走っている。後ろの赤い壁まで5mくらいしか奥行きがないところをゆっくり走る。あまりの急カーブに脱線するんじゃないかと心配したけど、今のところ事故もなく子供たちを乗せて走っている。

各国各地の食べ物が勢揃いしている飲食コーナー

メロンが並んでいるのかと思ったら、チーズだった。サヴォア地方のラクレット。

リヴォリ通りからの眺め、いいね!

デパート街、オスマン通りへ行ってみた

オペラ座裏のデパート街。動くウインドウが楽しみなのだ。

オスマン通りも綺麗に飾り付けられている。

ストの影響が感じられないほどの人でごった返していた。

ギャラリーラファイエット

外壁の照明が地味に感じられたけれど、

クーポールはゴージャスで、宝石をちりばめたよう。

では、恒例の動くウインドウをどうぞ!
今年のギャラリー・ラファイエットのテーマは、ミツバチ。農薬や公害で激減しているから、大事にしなくてはいけないのだ。

プランタン

プランタンデパートのは、動物がいっぱいいて楽しい

夕方に行くとものすごい混んでいるので、平日の8時以降に行くと結構空いています。

山田マミ プロフィール

幼少よりダンスを始め、80年代はアメリカに没頭するが、今は亡きダンス・ア・エックスでローザスの「オットーネ・オットーネ」を観て、ヨーロッパの歴史の深さに圧倒され、フランスに移住。しかし、言葉の壁に阻まれ、英語圏への脱出を計画。ところがその矢先、腹ぺこで歩いていた私に「ヴォワラ、マドモアゼル」と林檎を差し出してくれたおじさん。レストランに仕入れる林檎が1個足りなくなってもいいのかしらと心配しつつも感動!もしかしたらフランス人ってすっごく優しいかも?脱出計画は一挙に吹っ飛び、フランス定住を即決める。住んでみたら奥が深いフランス生活。1年が2年になり、、、あっという間に13年。住めば都のフランスはパリで、納豆と豆腐を食べ、中華街でベトナム麺をすすり、日曜日はマルシェで季節の野菜と魚を買い、時に日本のカボチャを育て、楽しく過ごしております。

 
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