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幕あいラウンジ バックナンバー

うらわまこと
 
Vol.61

「批評家論的自己弁明

 
ー藤井修治さんの指摘にこたえてー」       
 
2002年9月3日
 

 このページのもう一人の執筆者、藤井修治さんと私はほぼ同じ世代です。同じ世代でも必ずしも同じ考え方をしているわけではありません。このページをお読み下さっている方々は、二人はずいぶん違うなとお思いでしょう。でも、もっとも基本的なところでは共通 の意識があるのです。それは、人生で残された時間は多くない、それをどう使うかが重要だということを常に考えている点です。
 ではどう使うか、ここからは対照的といってもいいくらい違います。藤井さんは、短い残り時間だから、周りとうまく付き合いながらゆうゆう自適、いろいろと自分のしたいことをしょう、と。それに対して、私は残り少ない人生だから、多少無理をしてもやるべきこと、いうべきことをしてしまおうと思っています。
 これはどちらがいいという問題ではありません。藤井さんの生き方も魅力的ですが、私は性分でなかなかそうはいかないのです。でもできるだけ早く大学を辞めて、そうしたいなと考えてもいます。ただ、お酒は飲みませんし、グルメでもありません、観光にもあまり興味がない人間ですのでどうなりますか。でもジャズやカントリー&ウエスタン、アルゼンチンタンゴなどの音楽は大好きですから、その本場にも行ってみたいですね。
 個人的なことを書きました。HPですのでお許し下さい。
 このようなことを書いたのは、実は先週の藤井さんのページを見ていろいろと感じたことがあったからです。とくに私に対する批判の紹介です。たしかに、上に述べたような考えから、多少他の方々よりも行動の範囲は広く、批評家の範疇を超え、あるいは厳しいことをいっているかも知れません。したがって批判は覚悟しています。しかし、このような形の批判を受けるとは思っていませんでした。
 無視しようかとも思いました。しかし、この批判は私の書くこと、行動することの意図を完全に誤解させるものです。本当にこんな目で見られているのなら、このコラムを書いても意味がありません。止めてしまおうかとも思いますが、いずれにしろ私の人格にかかわることですので、それだけは明らかにしておきたいのです。そして、これは私の批評家観に通 じるものでもありますので、そういう面から少し説明しておきたいと思います。それで、それをもう一度再現しておきます。そうしないと話が進みませんので。それは藤井さんによれば、次のような批判が私に対してなされているというものです。
 「売名よネ」「権力志向だ」「地方名士だ」
 ひどいものですね。ズバリ、「はなもちならない、いやなやつ」というイメージです。私もこんな人間とはつき合いたくありません。

 その前にひとつ、先日の私のコラムで藤井さんが誤解されていることがあります。私が「自分の趣味にあったものを見るだけでなく…」と書いたのは、たとえばコンテンポラリーしか見ないとか、外来にしか興味がない、でなく、という意味で、藤井さんの場合には「趣味として見る」ということであって、それをどうこういっているのではありません。

 前にもたびたび書いたり言ったりしていることですが、私は批評家としてこれだけはすまいと思っていることがいくつかあります。  その重要な一つが「売り込み」です。一般論としてこれを否定するわけではありません。企業ではもちろん、最近では政治の世界でもPRは重要です。舞踊の世界でも営業活動は団体、個人ともむしろ足りないくらいです。若い研究者が、積極的に自分をPRするのも結構だと思っています。
 ただ、わたしは、たとえば原稿、各種の審査員、選考委員などに自分を推薦する、他人に推薦を依頼する(つまり売り込む)ことは、文化庁、民間をとおしてしたことはまったくありません。たしかに現在はおかげさまで比較的多くの原稿執筆、審査員、選考委員のお仕事をいただいていますが、それは主催者が認めてくださったか、どなたかが推薦して下さったからです。ですから、文化庁の仕事もその他の仕事も始めたのは比較的遅くなって(50歳代後半)からです。バレエ協会関係では、服部知恵子賞委員は去年から、公演プログラムへの寄稿は今年が初めてです。したことのない審査員、選考委員、あるいは書いたことのない媒体はまだたくさんあります。私より若くて前からそういうお仕事をしている方はたくさんおられます。もちろんそういう方は売り込んだからというのではなく、優秀な能力をもっているからであることはいうまでもありませんので誤解なきよう。
 あえて付け加えますと、仕事をお断りすることはあります。コンクールにしても今年だけで、3つの審査員の依頼を辞退しています。また、売り込みとは違いますが、とくに各地の公演に主催者に負担をかける形での招待の要求は絶対に避けています。各種のパーティや打ち上げに出る機会はありますが、そこでも自己顕示は意識してひかえ、スピーチもやむをえない場合以外はお断りしています。
 もちろん、経歴にこれらを記載することはあります。しかし、現在進行中のものについては、委員、批評執筆を含めて、明らかにすることはありません。
 ですから、私のどこが「売名」なのかわからないのです。舞踊界のために微力ながら頑張っているということをホームページに書くこと(他には書いていません)が売名だといわれればそれはなにおかいわんやです。(今日のは「弁明」ですが)。
 権力志向の指摘も意外です。これはひとつは権力者にすりよること、もうひとつは自分の権力を振り回すことだと思います。舞踊界の権力といえば、語弊があるかもしれませんが、文化庁、日本バレエ協会、新国立劇場などが考えられます。私はむしろこれらには厳しい要求や批判をしていると思っています。たとえば、文化庁には、思い付きの断片的助成でなく、体系的、長期的に文化振興を考えるべき、新国立には付属の舞踊学校、舞踊団の設立を長期ビジョンとして打ち出して欲しいなどの希望をだしています。ただこのような機会は公式にはほとんどないのが残念です。また、これらの仕事をしていることを背景にして自分の力を誇示したり、他人に何かを要求したことはないはずです。
 まとめていうと、批評家としてもっとも避けるべきは、批評を書いたり、委員をしているという立場を利用して相手(舞踊関係者)に無理な要求をしてはいけないということ、いいかえれば批評家だからしかたがないといやいや従わせるような行動は絶対に避けるべきだということです。いい意味の批評家の権威は守るべきだと自戒しているのです。
 「地方名士」は、なんとでもおいいなさい、という以外にありません。ただし、私は地方ということばは原則として使いませんし、名士でもありません、せいぜい迷士でしょう。名刺をばらまくということもしませんしね。
 こういう言い方が批判を受けるのかもしれないということを承知であえて付記しますが、私は大学の教員としての仕事で、生活には十分以上の収入をえています。舞踊の仕事はボランティアで満足。本当に舞踊が好きなのです。批評家が好きなのでなく。




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