僕が紹介するダンサーはロイヤルバレエ団の「蔵 健太」さんです。
健太さんと初めてお目にかかったのは、バレエシャンブルウエストのスタジオです。第22回清里フィールドバレエへのゲスト出演が決まり、リハーサルのためにお見えになったときに、こちらから声をかけさせていただきました。
はじめまして、蔵 健太です。
現在ロイヤルバレエ団のソリストです。クラシックの作品の全幕作品から小作品までソロの役を踊る事が多いです。キャラクターなど個性が良く出る役柄を好んで踊っています。
蔵 健太さんのダンスを紹介します。
蔵さんがコールドバレエにいた時にローザンヌガラにて同じバレエ団のチェ・ユフィさんと踊った物で、演目は「二羽の鳩」よりパ・ド・ドゥです。
土方さん。あなたが思う、蔵 健太さんのスゴイところは何ですか?
とにかく「かっこいい!」んです。
バレエダンサーになるために生まれてきたような恵まれた容姿はもちろん、王子としての立ち居振る舞いも実にノーブルで、シャンブルのダンサーみんなの心を一瞬で鷲掴みにしちゃったほどです。
健太さんのスゴイところはまだまだあって、清里ではどんな役でも常に真剣に取り組み、踊りも本当に丁寧でした。そして僕がいちばん見習いたいと思ったのが、健太さんの卓越した表現力です。舞台中に我を忘れて見入ってしまったこともしばしばでした。
ありがとう。
土方君はバレエにとても几帳面で良い意味で細かい事にこだわる方だと思います。
リハーサルや舞台に立った時に一つ一つのステップ、動作をきちんとこなす事を心がけている事が近くにいてとても良く感じました。
そして正確なステップを踏むだけではなく、踊りに力強さ、爽やかさなどを盛り込む事ができる気持ちをコントロールする天才だと思います。
たまに勢いだけで舞台に立ってしまう私はいつでもクールに丁寧に踊る彼から沢山の事を学びました。
シャンブルウェスト滞在中は更衣室で一緒になった事もありますが、洋服のまとめ方、所持しているバッグの整理の仕方などもとても綺麗にしていまして、私生活でも自分をきちんと管理しているところは本当に見習うべきだと思っています。
○土方一生さんから蔵 健太さんへのプライベートクエスチョン
健太さんのストレス発散方法を教えてください。
ちなみに、僕のいちばんのストレス発散方法はドライブです。風が爽やかになるこれからの季節は、屋根を全開(オープン)にして走ることが多いですね。^^
私はごくたまに仕事がきっかけでストレスを溜める事があります。バレエはやはり人が作った物を自分の気持ちに置き換えて表現するアートなので、たまにバレエ団から求められている事と自分が表現したい事が一致せずもやもやしてしまう事があります。
特に「これだ」っといった発散法はないのですが、ストレスを感じた時はまず職場を離れ自分が今一番したい事をするようにしています。
趣味は車、料理ですが、車で思いっきり走るのも好きですし、友人と食事に行ったり思いっきり飲んで楽しむ事も多いです。その時に応じて自分の感情を解放する場をまず見つけようとしているのかもしれません。
思い出の一曲とそれにまつわるエピソードを教えてください。
自分がへこたれた時には長渕剛の「captain of the ship」を聴いてます。
あなたが今までで最も影響を受けたダンサーは誰ですか?
また、その人からどんなことを教わりましたか?
熊川哲也さんです。
ロイヤルバレエスクール入学した時には彼はプリンシパルで活躍していまして、舞台上での迫力、演技にいつも夢中になっていて彼の踊りが観たくて学校の授業をさぼった事もあります。
17歳の頃からロンドンで私生活でもお世話になっていまして、ご飯の炊き方や魚の焼き方を教えてくれたのは哲也さんです。
今までのダンス人生の中で一番辛かった・挫折した出来事はありますか?
あるなら、そこからどうやって復活したかも教えてください。
今まで疲労骨折を2回、膝の手術を2回、椎間板ヘルニアを患ったりと怪我をするたびに「自分はバレエに向いていないんじゃないか」と辞めようと思った事は数えきれないくらいあります。
でも自分がバレエが大好きで舞台で踊る事は絶対辞められないといつも自分で気持ちに整理がついています。復活法なんてありませんが、いつでも自分の気持ちに正直に向き合おうと思っています。
初恋の思い出を語ってください。
内緒です(笑)
最近一番感動した出来事を教えてください。
清里フィールドバレエに参加した最終日公演で観客の拍手を聞いたときに涙が止まりませんでした。
プロフィール
蔵 健太
旭川市出身。8歳からバレエを始める。
94年、全日本バレエコンクール3位、95年ローザンヌ国際バレエコンクールにてスカラーシップ賞受賞。同年旭川市新人奨励賞受賞。ロイヤルバレエスクール入学。
97年同スクールを卒業後、ロイヤルバレエ団入団。2001年ファーストアーティストに昇格。2007年ソリストに昇格、現在に至る。
主なレパートリーは「ロミオとジュリエット」よりマキューシオ、ベンボリオ役。「眠れる森の美女」よりブルーバード、フロレスタン役。「ビアトリックス・ポター」よりジェレミーフィッシャー。「シンデレラ」よりジェスター。「ラ・バヤデール」よりブロンズアイドル。「シルビア」よりエロス役。「うたかたの恋」よりハンガリー将校役。「白鳥の湖」よりパドトロワ。「ジゼル」よりリードパドシス。「オンディーヌ」よりティレニオ役、「オマージュの贈り物」より火の精などソリスト役からプリンシパル役まで多数のレパートリーがある。
また世界各地の様々な振付家、クリストファーウェルダン、ジョージバランシン、フォーサイス、キリアン、マイケルコーダー、アリスターマリオット、バネッサフェントン、アシュリーページ、デビットビントレー達の作品も行っている。
近年では世界各地の公演に出演し、日本国内でもワークショップを開催、バレエ指導を行っている。