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カバーストーリー

ダンスの世界で活躍するアーティスト達のフォト&インタビュー「Garden」をお届けします。

HOMEカバーストーリー > 名倉加代子 01


25年前ブロードウェイから来たダンサーに、ジャズはリズム感が難しいから日本人には向かないと言われたことがありました。トップリーダーとしてここまで日本で牽引していらして、ご苦労はおありでしたか。
「人を育てるという意味での苦労はなかったですね。みんな勝手に育っていったの。私は私のメソッド、信念で教えていて、自分で何かを持っている人はそこにプラスして飛び出せた。私について稽古場でそれを守ってやってくれる人たちもまた貴重な存在です。
 リズム感は、今はずいぶんよくなってきています。たとえばワルツを踊るとウィーンの人がどこか違うっていうことがあるように、ジャズでも白人と黒人の違いはあります。私がニューヨークで踊った時「あなたの踊りが好きだ」と向こうの人に何度も言われたことがありました。なぜかというと、向こうの人にないものをもっているから。私たちが向こうのジャズダンサーを見ると素敵と言うのと同じかもしれませんね。」




きっと先生の日本的な繊細さとかオリジナリティに惹かれたんでしょうね。
「私が心からジャズダンスを頑張ろうと思ったのは、ニューヨークでレッスンを受けた時でした。おかげさまで選ばれて最後まで残ったある日、「あなたのジャズはここにいる誰よりもジャズだ」と言われた。ジャズといういただきものを踊っていても、そういうふうに見えるのか、そんなふうに言ってもらえるのか。それで、日本人には日本人のジャズがあってもいいんじゃないかと思ったんです。ジャズピアニストの秋吉淑子さんが、日本人のジャズにこだわっていますね。最終的には奏でる音楽でいい、と。私の踊るジャズでいい、そういうふうに思いましたね。」

大切なのは精神というか踊る心、ですか。
「そういうことだと思います。長年やってきて、ダレないですむ、そういうものになりました。そしてこんな私でもなんとか頑張って踊りをやっている、いつもそう思っているんですよ。ほんとうにありがたいことです。」
みなさん名倉先生とは30年来のお付き合いとお聞きしましたが、みなさんから見て名倉先生はどのような方なんでしょうか?
常藤さん 「作品通りの洗練された、本当におしゃれな方ですね」
加藤さん 「こんなこと言っていいのかわかりませんが、私たちは先生のことを尊敬を込めてバケモノと呼んでます(笑)」

それはなぜですか?
加藤さん「まず、疲れをしらない若い肉体、一人で一番動いてらっしゃいます」
北村さん「振付けの時なんかは、休むことなく一気にやってしまいますね」
常藤さん「3時間でも、4時間でも」
加藤さん「いつまでもやってます」
北村さん「トイレに行くのもすごく苦労します。休みがないので!(笑)」
加藤さん「生徒に対しても、自分に対しても、すごくきびしい」
北村さん「世界一きびしいですね」
加藤さん「だから、先生たまにはお休みをとってください、って言うんですけど、全然休みません!一人で踊ってらっしゃいます、はい」
常藤さん「でも、結構素朴なところもあって、」
加藤さん「洗練されてるんだけど、どこかこう、ふっと素朴な」
北村さん「少女みたいなところがありますね」

名倉さんのこだわりの品
<香水・レコード・美術全集>
使い切れない、読み切れない、聞ききれない

コーヒーをその時の気分にあわせて、好きなカップで飲むこともこだわりのひとつなんですけど、香りが好きで、新しいものが出るとどんな香りだろうと思ってすぐ買っていたら、たくさんの数になってしまいました。気に入っているのをいくつかあげるとジャン・パトゥのミル、ジョイ、ゲランのミツコ、ココ・シャネルのものですね。それから父が残してくれた美術全集。私は絵が大好きで、なかでもパウル・クレーの絵は鳥肌が出るくらい。ヴァイオリンを演奏して、詩人でもあったクレーの絵は、夢があって構成的で色の感性がほんとうに素晴らしい。全集にはあらゆる美術家の作品が収められているんですが、なかなか全部は見られません。レコードは、昔のディスクが800枚ぐらい。ジャズからクラシックまで多種多様にありますが、一生かかってどこまで聞けるか。こんなふうに”使い切れない、読み切れない、聞ききれない”っていう、一生かかってもできないことがまだまだ一杯あるのはいいでしょう?


最後に名倉さんの夢についてお聞かせください

Q,
あなたが子供の頃に思い描いていた「夢」はなんでしたか?

小学低学年の頃は「美容師」
妹たちのヘアーをくるくる巻いたりして楽しんでいましたが、踊りをはじめてからは
「バレリーナ」でした。



Q,
あなたのこれからの「夢」はなんですか?

自分に正直に作品を創り続けること。
自分がびっくりするような作品ができることが、夢かな?
そしてその作品をスタジオの皆が踊り続けてくれること。