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(2015.3.24 update)

内田香 Garden vol.29

華やかさ、強さ、しなやかさ。内田香の放つ魅力は彼女の舞台そのままである。その快活で明瞭な語りに、独自のダンスの向こう側が垣間見える。

Interview,Text : 林 愛子 Aiko Hayashi

 

トゥシューズが履きたくて


「冷めないうちに召し上がれ!」


初めての発表会

「彼女のredな味」とか 「なみだ」、「冷めないうちに召し上がれ」とか、内田さんは早くにご自分のスタイルを打ち出しています。それはどこからきているのでしょう?

言葉にするのが難しいのですが簡単に言いますと閃きでしょうか?インスピレーションから掘り下げることが多いです。 日々日常の中で突然閃いたことを自分の中に幾つも留めておき、心の中の引き出しからイメージを取り出しながら時代の雰囲気や自分の心境とリンクさせて作品のテーマを決めています。例えばテーブルを使用した『冷めないうちに召し上がれ!』では、4人でテーブルを囲み、話し、笑う、こんな雰囲気をダンス化していこうと、実験しながら作り上げていきました。メンバーとは、友達のような感覚です。私は、同じ舞台に出ているので先生と呼ばないでとよく言っています。今は、新しいメンバーも入り年の差も出ていますので友達感覚ではいきませんが、先生と生徒の関係は舞台には必要ないと思います。もうひとつ、『彼女のredな味』では、写真を見たのがきっかけです。砂漠に赤い女が横たわっている。そこから、赤・熱い・甘い・危険・秘密・強さなどイメージが膨らみました。CMでよくみる資生堂の椿みたいな感じです。『red』は、私の作品、人生に大きく影響した作品です。

 

それがおもしろいですね。5歳からダンスを始められたとか。やはりきっかけはお母様ですか?

私は男兄弟に挟まれていたせいかとても活発で所謂おてんば娘でした。もっと女の子らしく、と躾も兼ねて習わされたのがきっかけですね。モダンバレエの高橋なよ子先生、そのあと小学2年で大久保苑子先生につきました。大久保先生は、モダンダンス以外にミュージカル、タップ、民族舞踊、詩吟で踊ったり、いろいろな分野でもやる先生でした。今では、大変役立っていますが、その頃の私は白鳥やジゼルのような美しい踊りに憧れていました。いつ自分は、トゥーシューズをはけるのか・・・。クラシックバレエとモダンダンスが違うものだと知らなかったんです。(笑)

早くから踊りで行こうと決めていましたか

小学校の文集には、将来はバレエの先生になりたいって書いていましたが、父が航空会社に勤めていたのでスチュワーデスに憧れたり、海外で生活したいとも思っていました。でも高校2年の時、初めてソロを創作しました。これが一番大きく影響したと思います。近くの集会所を借りて練習し、動きや音楽、衣装を考えることにも興味を持ちました。いろいろなオープンクラスや念願のバレエクラスやジャズダンスにも通うようになりました。

それはやはり踊ることにも創作にも向いていた、ということで。内田さんの作品は骨格がしっかりしていてフェミニンですね。

フェミニンという意味では、女性の多面性や日常を取り上げてダンス作品を創ってることが大きいと思います。カンパニー名のRoussewaltz(ルッシュワルツ)は、英語と仏語から作った造語です。赤毛のワルツという意味です。赤い髪が舞ってるイメージで舞台空間を占めてみたいという、これも閃きですね。


HIROE MASAMI
 

ヴェリーショートじゃ無理ですものね(笑)。

最初は私もショートヘアだったんですがRoussewaltzを立ち上げてからロングヘアになってきました。小さい頃は、髪は長かったものの、お転婆だったのでいつも縛って下ろさせてもらえなくて、憧れていたのですね。リサイタルでは、髪をテーマにしたシーンをいれます。髪の長さや色をわざと強調したり・・・(笑)

ダンスを始めてから迷いはありましたか?

もちろん、作品づくりや技術的なことで悩むことはありました。ダンサーが輝くのは舞台の上だけです。それ以外は、朝から晩まで毎日稽古場通い、練習の日々にいつも疲れていました。しかし、本当に踊りが大好きでひたすらレッスンし、うまくなりたいと思っていました。

舞踊と関わってきてこの10年で環境は変わったと思いますか?

学校教育のカリキュラムにも加わり、ダンスに感心を持ってもらえることは大変嬉しいことです。ヒップホップの人気に勢いを感じますし、バレエも社会人を中心にクラスが増えています。

 

楽しくダンスを

ご自身についてはいかがですか?

Roussewaltz結成当初は、自分で動きメンバーに振り移し、ほとんど全て私の振付けだけで作品を創っていました。現在はメンバーからもいろいろとアイデアを出してもらって、それを組み合わせまとめ、揃えたり、壊したり・・・話し合うことが増えています。メンバーの個性がもっとうまく引き出せないか、他の方法やり方はないかと選択の幅が広がり楽しいです。

ご苦労は?

小さなカンパニーですので、リサイタルするにしてもお客様を増やすことは、とても大変です。知り合いやダンサー同士だけではなくコンテンポラリーダンスを知らない観たことのない方々が劇場に来て下さると本当に嬉しいです。


HIROE MASAMI
 

公演の前などは、どのように?

ホームページでお知らせし、公演の告知映像などを作りアピールしています。おかげ様で映像を見て来て下さる方も増えています。

カンパニーにはいろんな方がいらっしゃるんですか?

子供の教えやヨガの講師、学校のダンス部のコーチをしていたり、大変ですが仕事やアルバイトをしながら踊っています。

ほんとに皆さん偉いですね。

限られた時間の中でいろいろな思いをしてリハーサルに来てくれています。だから私は、そのメンバーの為にも自分の為にも、いい作品楽しい作品をつくりたいと思います。リハーサルでは生き甲斐になるような時間、もちろん辛く厳しいこともありますが、踊っていても観ていても楽しい活力が沸く、そんな作品を目指します。コンテンポラリーだからといって難しくある必要もないと思いますし。

だからイメージ豊かでわかりやすい内田さんの作品が女性の観客だけでなく男性にも支持されるんでしょう。

私にはそれがすごく大事なんです。とにかく、明るい作品でスッキリしてお客様には帰っていただきたい。もちろん暗いテーマのなかにもおもしろさもあるし、映画でもすごくスッキリする作品もあります。ただ暗いだけじゃなくて。

 
内田香

内田香 Kaoru Uchida

(Rousseewaltz主宰/振付家/舞踊家)

各コンクールにて第一位、文部大臣賞を受賞。
現代舞踊協会制定新人賞「ラ・ギャルソンヌ」、群舞賞「彼女のredな味」、村松賞、舞踊批評家協会新人賞などを受賞し、文化庁派遣在外研修員としてパリに留学。
帰国後 2003年Roussewaltz(ルッシュワルツ)を設立。
現代女性の多面性や日常をスタイリッシュに描く作品を次々に発表している。
2006年1月には「冷めないうちに召し上がれ」をニューヨークとサンチャゴで上演。N.Y.タイムズ紙では「絶えず魅力的な舞台、Roussewaltzの全プログラムを観ることが出来たら、何と素晴らしいことだろう。」と評される。
2006年舞踊批評家協会賞「なみだ」、現代舞踊協会制定江口隆哉賞受賞。
2012年 現代舞踊協会制定時代を創る現代舞踊公演優秀賞受賞「moon」。
2015年 都民芸術フェスティバルにて新作「concentrationー記憶のカケラー」を発表。