(2015.3.24 update)
華やかさ、強さ、しなやかさ。内田香の放つ魅力は彼女の舞台そのままである。その快活で明瞭な語りに、独自のダンスの向こう側が垣間見える。
Interview,Text : 林 愛子 Aiko Hayashi
まず生徒より稽古すること
ところで、ご自分ではお年というけれど、内田さんは肉体的にもほんとにお若い。長く踊り続けて、ご自分に課していることはありますか?
生徒より稽古すること。ダンスのレッスンはもちろんですが、いろいろな意味での身体づくりをしなくてはならないですね。足を高く上げる、たくさん回転する為の練習ではなくて、自由な身体になる為の稽古。また、作品を創っているのですから常に感じると言いますか、アンテナを自由に張り巡らせて小さな物事に敏感かつ繊細に反応したいです。これをダンスにしたら、どうだろうか?楽しいか?広がるか?とか。最終的には、面白いだけではダメなのですが、まずおもしろい作品を創ろうと思っています。
おもしろい、とは?
いろんな意味で魅力的であったらいいなと。人間、生き方、・・・らしさが見え隠れするような。直接言葉で伝えるのではなく、人が人に何かを感じる。おもしろいことだと思います。感じ合えるかどうかは、どちらかが閉じていては成り立ちません。舞台上でダンサーが解き放されて、音や光、空間がひとつになり、その世界にお客様も引き込まれて繋がって、何かを感じ合う瞬間が生まれればいいな、と思います。
チャレンジする人が好き
カンパニーを率いていらしてダンサーに求めることは何ですか?
素直でチャレンジを怖がらないこと。舞台上で演劇的なこともします。ピルエットで何回転も出来てもハッと驚いた表情できる?と言いますと、怖がり恥ずかしがってしまう人とすぐに反応できる人がいます。やはりチャレンジする人が好きです。そういう人はとても素直だと思います。動きや世界観に限界なく、何でも取り込めるダンサー。柔軟な肉体と精神を備えるためにも日々の稽古は大切だと思っていますので、稽古しない人は、私はダメですね。
チャレンジすることは自分の解放につながるといわれますが、これがなかなかむずかしい。でもやっぱりダンサーとして舞台に立つということは、観客にも解放感を分けてあげることだから。大変ですが、稽古を重ねてできていくこともあるでしょうね。
ほんと、私たちダンサーは自由に舞台に立てるために稽古しているんですよね。
「真実」 根本浩太郎
静止、歩く、走るはいつまでたってもテーマ
ニューヨークにて
「ブルーにこんがらがって・・・’99」
華々しいキャリアを積んできた内田さんにとって、プレッシャーはどうですか?
なるようになれと(笑)。目の前の作品にただ夢中でした。学生時代も美しく踊る自信がもてなかったのと激しい感情の表現がしたくて、女の情念をテーマに『夜叉ケ池』など、おどろおどろしい世界につかっていました。
それを目指してらした。
本当に美しく華麗に踊る人はたくさんいましたし、私の個性は妖艶な世界を表現することだと思っていました。でも何度かニューヨークへ行った時、ちょっと楽しく踊りたくなったんです。内面にこもる自分だけでなく、もっと解放した作品を踊ってみたくなりました。思い切ってずっと伸ばしていた髪をバサッと切って下ろして踊る。ココ・シャネルをイメージして、当時タイツにジョーゼットが多かった衣装を私は素足とワンピースで踊りたい。今回は、ファッションから作品をつくろう、こういうのもあるかもしれない・・・。そして、『ラ・ギャルソンヌ』ができました。新人賞を頂いた作品ですが、ここから作風が変わってきたかもしれません。
内田さんの先生は金井芙三枝先生。金井門下の方々は優秀ですね。
金井先生がストレートにわからないと言ってくださった。当時は辛かったけれど、今にして思えば大切なこと。何をやりたいのか、何を考えて踊っているのか伝わらないと。コンクール作品では、ここで多くターンして、もっと高く跳びなさいと注意されがちですが、そうではなかったです。当時から、作品づくりを意識して指導されていました。私も若かったので当時は理解できてないことがほとんどでしたけど(笑)。
それはすごい大きなご経験ですね。金井先生の言葉で強く残っていることはありますか?
たくさんありますよ。最初のころは、そんなにガンガン動くんじゃない!止まりなさい!と。その止まることの大切さを言われました。私も負けずに一生懸命新しい振りを考えて、先生に見てくださいと踊りますが、動かないで、歩くだけでいい、と。それは、もう大変でした。
それはご自分のなかで生かされていると思いますか?
とても生かされています。動くことより何もしないことが、今の自分の中でも課題になっています。身体がきいてよく動く踊りでも、ふとしたことがこちらにグッと響いてこない。要するに止まることが生かされていないから。止まろうと思うのはすごいことで、いつ動くかいつ止まるか、その選択が大切。静止、歩く、走るはいつまでたっても課題です。
踊りは奥が深いですね。
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