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カバーストーリー

ダンスの世界で活躍するアーティスト達のフォト&インタビュー「Garden」をお届けします。

HOMEカバーストーリー > カバーストーリー 鍵田真由美×佐藤浩希 03
鍵田先生は厳しかったですか。
佐藤「はい、それはもう(笑)。プロを目指すという時から、じゃ、サパテアードを今晩中に仕上げておきなさいって言われて、三連符なんかを朝まで練習しました。」
鍵田「頑張ってねー。じゃ私はご飯行ってきまーすと言って出かけていましたね(笑)。」
スタジオに泊まり込むほどに、とりつかれちゃった一番の理由はなんでしょうか。
佐藤「フラメンコはコミュニケーションの芸術、愛を語り合う芸術だな、と。音楽にのせられて踊るだけじゃなくて、踊り手自身も音楽家で、自分の足の音で会話ができる。そこに一番惹かれました。すると周りにいる人たちともずっと一緒にいたいし、何かこうコミュニケーションの渦のなかに自分の身を置きたいっていう、自分の中では福祉のボランティアをやっていた時の気持ちと変わらないものになっていた。やっていることは違うんですけど、ずっと人と関わっていたいと思わせるのがフラメンコなんですね。」
佐藤さんの最初の作品「智恵子抄」は鍵田さんをイメージされた。鍵田さんは佐藤さんにとってミューズですね。
佐藤「そうなんです。」

そして公私にわたるパートナーであり、もしかしたら戦友でもありますか?
鍵田・佐藤「そうですね。」
佐藤「まったく違う二人なんで、役割がかなり分かれていて、それをお互い同時にやりながら今まできました。僕たちけんかをしたことが一度もないんです。」
鍵田「今は基本的に演出・振付は佐藤のインスピレーションそのままです。」
佐藤「舞踊的に直したほうがいい場合は、彼女が見ていきます。」

スペインで過ごすそうですが、年にどのくらい行ってらっしゃるんですか。。
佐藤「年に2,3回です。」
鍵田「それこそ一緒にいるんですけど、佐藤はアンテナを体中から張り巡らしているような感じで外に出るタイプで、逆に私は違うペース、一人で家にいるタイプなんです。」


佐藤「ヘレスにはおじいちゃんが歌って孫が踊るとか、そういう情景が町中にあふれています。手拍子と踊りだけで声掛け合って楽しんでいる。それこそフラメンコだと思うんです。僕たちは舞台で作品を見せて皆さんに感動を与えたいなんて立場でやっている。でもアートはもともとそういうものじゃなくて、人々の生活の中にあるもの。アーティストが素晴らしいんじゃなくて、見に来ている人々の体の中にアートがあるんだということを導きだせるようなもの。たとえば日常的な断片を静止画に描くけれど、それを画家がどういう視点で描いているか、人々が生きているその中に神様が宿っているということを表せる作品づくりが大事なんじゃないか、そんなことを考えさせられます。へレスではまさにフラメンコという芸術を民衆が持っている。そこにものすごく魅力を感じますね。」

 
加わって一緒に踊ったりなさる?
佐藤「もちろん、それがまた楽しいんです。」

あちらではやはりスペイン料理ですか。
鍵田「日本にいるときも向こうでも、朝も昼も夜も佐藤が料理作るんです。ちょっと予想と違った出来上がりだと、そのあとの沈み具合ったらないんですけど(笑)。」


 
それは素敵。お料理もアートですね。
佐藤「スペインにいる時には集中して料理ができますが、どうしても素材の関係で日本料理では味が違ってくるから、スペイン料理が多くなりますね。市場にはロマの人たちが多くて、そこではかけ声も自然とフラメンコになっているんですよ。」
鍵田「肉やお魚の大荷物かかえて帰ってきて、家でげらげら笑っている。あそこの小父さんの踊りがおもしろかったとか、日常にフラメンコがあるってことを十分に感じとれる毎日があるんですね。フラメンコっていうと特別なものと思われがちですが、日常的に笑い合いながら踊っていいものなんだっていうスパイスを、カチカチの生徒さんにも振りかけます。だから佐藤のクラスなんか大笑いの声が聞こえてくるんです(笑)。」