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カバーストーリー

ダンスの世界で活躍するアーティスト達のフォト&インタビュー「Garden」をお届けします。

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TAKAHIRO Garden vol.17

TAKAHIRO 何を見て何を感じ、何を聞いて何を思ったか――そういう湖みたいなところからダンスは生まれる

シャープでキレよくスタイリッシュ、日本人ならではの繊細さと洗練で織り上げられたダンスで驚異の迫力を放つTAKAHIRO。
待望のニューヨーク・ダンス集団「THE MOVEMENT」とともに帰国したTAKAHIROが語ってくれた”ダンスの誕生”と”ダンスのこれから”はすべてのダンサー、ダンス・ファンへの贈り物だ。

ダンサーであり人間である僕たちにはいろんな目線がある

ダンサーにとって音楽は重要ですが、音楽的なベースは子供の音楽だったんですね。

そうですね。アポロ・シアターのものとか、スーパーマリオのものは奇をてらったのではなくて、ただ自分を音楽のかたちにして、上野隆博という人間を音楽に変換してダンスというフィルターに変換したらこうなりました、っていうだけの話だと思います。

今、新しい音楽に出会うと新鮮ですか?

ダンスに入り始めてから、新しい音楽、流行の音楽、流行の振付にいっぱい出会って、流行のダンスをいっぱい知って勉強して。トップのアーティストとも大勢出会って一緒に仕事をして、ああ、これがほんとのワークなのか、とか思いながら。で、今は逆に、”あの頃”だなと思ったりします。

あの頃とは?

技術や経験や知識がたくさん手に入りましたが、時としてそれは僕をしばっていると感じることがある。
知識や経験や技術はその人の羽になればいい、と思うんです。それがあるからワーッとできればいいけど、いろんな期待とか、TAKAHIROさんがつくるんだからこうでしょう、とか。それは社会的抑制というんでしょうか、今までになかったものです。
今まではただ真っ白なところに絵の具をグジャグジャってやればよかったけど、知らない間に自分の描いた絵で自分自身が囲まれている気分。じゃあまた昔みたいに、やりたいことやっちゃえ、白い絵の具だ、グシャグシャッていうのを、今の2011年にもう一回やってみちゃおうかなって。

そういう欲求ですね。あの頃の自分になって、今度の舞台を。

そこでも、いくつかシーンをつくれたらなと思います。

 

マドンナの「セレブレーション」をネットで拝見したら、TAKAHIROさんは新宿の路上で踊ってらした。
固いアスファルトから、舞台の板の上まで、なんて自在なダンス!
でも身体には負担は大きいことでしょうね。

そうですね。ボロボロ崩れながら、加速していきながら、でも進んでいくわけです。
ただ、僕はボロボロになっていっても道が続いている。その次の人たちが来てくれればいいわけです。
僕たちは受信者じゃなくて発信者ですから。発信者は発信しよう、と。
ボロボロになってダンスの人生が終わったらまた次の人生があるし、またそこから見えるものがあるわけです。僕たちはダンサーであり人間です。人間にはいくつもの目線がある。
たとえば、僕も今までは舞台でただ踊ることが楽しかった。でも今はつくってみることにも興奮を覚えるし、こうしたい、これを見せたいっていう欲求があったりする。
それから僕がボロボロになって、そのボロボロをどう見せるかっていうのだってある。
ゴミのリサイクルだって芸術ですから。

自分の頭の中で映像として見られた動きが実際に出来たら最高

振付のアイデアは、どんなふうに生まれるのでしょうか?

僕は基本的に一日中イヤホンで音楽を聞いています。
電車でも家でもイヤホンで。小さいトトトという音の重さが聞こえたりするし、あ、こんな音が中に入っていたんだとか、あんまり耳は強くないんですけど、それでひらめく。振付で、僕がヘンなところは、自分の踊っている像や考えようとしていることを、頭の中で映像として見ることができるんです。
それをお客さんのように見るわけです。起きていながら夢を見ることができる的な、たぶんそれは長い間にできるようになった特技です。
で、その映像を見ながらこれはすごい、実際できるかな、と。
自分がソロで踊る時もそうやって、今いいのができた、という時に急いで練習して、それをビデオにとって残す。そして現実の映像を見て、頭の中で見てたのとちょっと違うな、と直していく。何人も振り付ける時にも全体のみんなを見ながら、現実で見てる映像と想像で見ている映像をシンクロナイズしてやっていきます。

 

それは幸せな時間の過ごし方ですね。

いいものができるとやっぱり幸せで、一人で電車の中でフフフフッ、これはすげえってやっています。
それを実際に人がやって現実になってくれたら、もう最高です。

favorite

思い出の品

2007年か8年ごろ、雑誌でニューヨークのダンス写真を撮ってといわれたことがあって、以来、趣味で撮っています。
振付と通じるものがあって、こうなったらこう撮れるかな?って想像してるのと、実際に写真になった時に映像が違いますよね。
それをどこまで近づけるかというところにウキウキ感がありますね。それと、ふだん見ているもののなかに、見えなかったものが写真では発見できるんです。たとえば下からのアングルだったら、あ、こんなふうに見えるのか、とか。そのふだん生活している中で、いろんな視点で見ることができるのがこのフィルターです。
はじめは小さいカメラだったんですけど、せっかく撮るんだったら、いいカメラの方がと思って買いに行きました。
被写体は、風景でも人物でもなんでもあり。
最近は水たまりを撮るのが好きなんです。そこに映る、上のほうの景色っていうのはまた違うんですよ。
特にニューヨークで撮っていますが、あまり場所にこだわりはありません。

 

dream

Q. 子供の頃に思い描いていた『夢』は何でしたか?
発明家になりたかった。
エジソンが大好きで、子供向けの伝記を何度も読んだ。みんながびっくりする、わくわくするものを新しく作り出す人に憧れた。

Q. あなたのこれからの『夢』は何ですか?
世界に通用するエンターテインメントグループをプロデュースしたい。
個人としては「好きなダンス」を深め続けたい。

Interview,Text : 林 愛子 Aiko Hayashi  Photo : 長谷川香子 Kyoko Hasegawa