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(2012.9/24 update)

酒井はな Garden vol.24

たぐいまれな表現力と並外れたダンステクニックで、ドラマから抽象作品までの世界を自在に行き来する酒井はな。
彼女の舞台には観客、演出家、振付家の誰もが引き込まれずにはいられない。今、最も輝いている酒井はなは現代の舞姫であり女優である。

妄想からどれだけ役のイメージを広げられるか

ところで、はなさんは私生活では2010年に結婚もなさった。ご主人はフォーサイス・カンパニーのダンサー、島地保武さん。

島地とも話すんですけど、私は私生活が波瀾万丈ではないので、役の中に入ってイメージをふくらますのが好きです。妄想ちゃんなので(笑)。でもそれがダンサーには必要なことなんだね、と。

本当にそうですね、失恋体験がたくさんあるからといってその悲しみや怒りを簡単に表現できるものではないでしょうから。

だからどれだけイメージを広げていけるか、お客様が私を見た時に、何かを感じていただけるようなダンサーというか役者というか、そういうふうにもっとなりたいなと思う。

結婚してから、ご自身が変わったと思いますか?

なにより視野が広くなりました。自分の世界だけでなくパートナーの世界も一緒に見ようとするのはいいことだと思う。
でも私、昔は結婚するならダンサーじゃない人がいいと思っていたんです(笑)。彼はすごく自然体で変わり者で(笑)。
出会ってすぐに波長が合って、この人と一緒に生きて行こう、大丈夫って感じました。

 

出会いはどちらで?

「ひかり肖像」という作品を森優貴君にお願いしたんですが、彼はビスバーデンにいて動けない。それで津村禮次郎先生と私はあちらで稽古するために合宿に行って、島地とはそこで出会いました。彼は現在もフランクフルトにいますが、未来は一緒に暮らして行くと決めて、今はできることをお互いにやろうとしています。

ウォルシュ振付の「カミーユ・クローデル」

アーティスト同士の素敵な結婚ですね。最近の新しい舞台は?

「マノン」で出会ったドミニク・ウォルシュがその後「オルフェオとエウリディーチェ」、「ウォルフガング・フォー・ウェブ」をつくってくれて、この2つは最近もアメリカで踊ってきました。
そしてドミニクがカミーユ・クローデルをはなで描きたいと60分の作品をつくってくれました。彼のカンパニーでこの「カミーユの生涯」を5月にヒューストンで踊って、そのあと標高の高いアスペンのフェスティバルでも踊ってきました。11月にもまたこれを踊ります。
彼は私が表わすものを楽しんでくれるので、私もやりやすくて舞台を楽しんでいます。

カミーユは彫刻家ロダンの弟子で愛人、自我との戦いのなかで苦しみます。はなさんにはぴったりの役。はなさんはドミニクのミューズなんですね。

彼もそう言ってくれるのでうれしいです。カミーユの弟ポール・クローデルは外交官で日本にも来ました。カミーユが北斎の版画の波のイメージで作っためのうの彫刻があるの、舞台では北斎の絵をスクリーンに映して出しています。美術も美しい作品です。

「カミーユの生涯」はベスト振付賞を獲得しているんですね。アメリカのお客様の反応はいかがでしたか。

すごく喜んでくださった。あなたは能の香りがするなんて言われて、ああ、そうなんだって自分でも感慨が深かったですね。

さらに活動の場をひろげて

お能といえば能楽師の津村禮次郎先生がはなさんを高く評価していらして、共演も多いですね。

津村先生とご一緒の舞台はほんとうに刺激的で楽しくていろいろ勉強させていただいています。先生とは9月もさいたま芸術劇場で和太鼓の佐藤健作さんとの「ハレの祭典」で、共演させていただくんです。

古事記の編纂1300年と「春の祭典」作曲100年を記念したコラボレーションだとか。
笛には一噌幸弘さんが参加して、豪華なメンバーですねぇ。

まさに男太鼓でおもしろいと思います。今回はテーマがしっかりあるので自分のパートを自分で振り付けてみようかと思うんですけど、島地と小尻健太さんにアドバイザーで入ってもらいました。

ダンサーとして、やはり長く踊っていきたいと思いますか?

はい。チャンスもあっていろいろ踊ることができましたが、若い時から毎回、この作品を踊れるのはこの機会だけしかない!!という気持ちで取り組んでいます。お客様に最高のものをお見せするためにベストを尽くして全身全霊をかけてやっていく。
それには自分が納得するまでの準備をして、そうすることで自信がもてて、結局、いい舞台をお見せしたいということだけに焦点をあててきたかもしれないですね。
そのためにこれからも身体のメンテナンスをきちんとするのを心がけて、どう身体をどう維持していくか、しっかり研究したいと思います。

 

佐藤健作和太鼓公演
ハレの祭典 「古事記」編纂1300年×「春の祭典」作曲100年記念

[日時]2012年9月29日(開演19時)、30日(開演18時)
[会場]彩の国さいたま芸術劇場大ホール
[チケット料金]S席7800円 A席5800円 *全席指定・税込み *未就学児入場不可
[出演]
和太鼓:佐藤健作 98年サッカーw杯大太鼓演奏・文化庁芸術祭賞受賞
バレエ:酒井はな 新国立劇場名誉ダンサー・文部科学大臣賞受賞
能:津村禮次郎 重要無形文化財能楽総合指定・10年文化庁文化交流使
笛:一噌(いっそう)幸弘 重要無形文化財能楽総合指定・創造する伝統賞受賞
ほか、和太鼓助演者
*舞踊アドバイザー:小尻健太(元NDTⅠ所属、ローザンヌ国際コンクールプロ研修賞受賞)
島地保武(フォーサイス・カンパニー所属)