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(2014.10.6 update)

鈴木稔 Garden vol.27

カルメンの奔放と激しさ、アンナ・カレーニナの一途と優雅さ、ジゼルの可憐と純粋さ。日本を代表する“踊る女優”は、昨年から今夏の舞台でもドラマを自在に紡ぎ出して客席を圧倒した。天性のたおやかさのなかには、人なつこさと可愛らしさものぞいて、出会う者の心をつかんでは離さない。

Interview,Text : 林 愛子 Aiko Hayashi

 

コール・ド・バレエを踊ってわかること

ところで、生徒さんを教えるうえでの方針をお話いただけますか?

なるべく作品のほうを学んでもらうようにしています。そのほうが学ぶモチベーションが上 がりますから。それから、どんなコンクールで賞をとってもコール・ド・バレエを経験してもらうことにしています。たとえば「ジゼル」でコール・ドやると足が痛くなって、ソロをやると痛くない。 その時点で大変さがわかるから、真ん中で踊らせていただくということは周りがどれだけ応援してくれているかを知るんです。そこに感謝の気持ち思いやりというものが生まれてくるわけだから、けっこううるさく言いますね。

大切なステージ・マナーですね。

そうなんです。コンクールに出ている子で、一位とるとやめてしまうことがある。それは残念ですね。みんなで協力して一つの作品を作りあげて、感動を共有するということを知らなくてかわいそうです。

バレエのおもしろさ、楽しさを知る前にやめてしまうんですね。今は、日本のバレエは充実しつつあります。フリーの方も、海外に自由に行く方もいます。由理恵さんはそのさきがけとなったダンサーなんです。

あちらでは、ずーっと悩みました。役をいただいても自分で手ごたえを感じられなくて。日本に帰ってきてからこれでいいんだと思えるようになった。いつか必ずテクニックも落ちてくるし、そんな時に芝居もの、ストリー性のあるバレエは作品自体の息が長い。それが昔から大好きだったからもっと勉強して、やっていきたいなと思っています。

これからの若い人たちにはどんなことを期待されますか?

やっぱり皆さん踊りが好きだから続けていると思うんですね。バレエは練習あっての芸術で、お客様に感動を与えてリピートしてもらわなければなりません。そのためには努力が一番ですね。汗をかいた、回った、跳んだ、ああすっきりした。それでは自己満足に終わってしまう。それと、客席に伝えるには表現が必要で、伝えたいという意志を持つこと。芸術はもっともっとおもしろいということを知ってもらいたい。壁にもぶつかるでしょう。でも方向をちょっと変えて考えてみると表現方法もたくさんある。

ダンサーの個性、その人に合ったやりかたがある。

表現の種類はいくつもありますね。それが好き嫌いから出ても全然かまわない、だっていろんな人がいないとつまらないですから。迷わずにそれを打ち出す強さも必要ですた。

今後のご予定は?

10月には、神奈川で井上恵美子先生の振付で「家路」という作品に出ます。来年は「アリオス・バレエシアター2014」でオーディションで集まった顔ぶれで作品を決める予定です。

 

こだわりの品


まず私がスコティッシュ・バレエに行くときにお守りとしてもっていったもの。私が巳年なので篠原が持たせてくれました。もう一つは篠原が日本から送ってくれたもので、ちょうど「白鳥の湖」の舞台が続いていて大変な時に、平行12次のシーズンの「ブルノンヴィルのナポリ」を踊ってアントルシャ・シスからシスを一度止めて降りる時に痛めてしまった。たまたまスポンサーの方が見にいらしている時にやってしまったのですが、向こうではきちんとケアをしてくださった。今もあの時の大変さを思い出して、また謙虚に油断禁物ときちんと学んでいかないといけないと思うようにしています。
カエルは、足首を骨折に近い怪我をした時に、スコッティッシュで活躍なさっていらした大先輩の大原永子先生がくださったんです。カエルがお好きな大原先生は、私のことを由理さんと呼んでくださって、「由理さん、これを持っていきなさい」と2匹いるなかの1匹をいただいて。私もカエルが大好きなものですから向こうでのお守りになりました。あとは私のことを応援してくれた父方と母方の祖母たちがいるんですが、彼女たちが持っていた真珠と水晶を分けてもらいました。舞台の時はどこに行く時も持って行って必ず化粧前に置いています。どれも私の大切なお守りです。

 

バレエ団ピッコロ クリスマス公演「シンデレラ」
主演:下村由理恵 佐々木大
日時:2014年12月25日(水) 18:30開演
会場:東京芸術劇場 プレイハウス
チケット料金:S席6,000円(ペア券11,000円) A席3,500円(ペア券6,000円)
お申込・お問合せ:バレエ団ピッコロ TEL:03-3972-1476
http://www.piccolo-1961.com/


2015年1月末をもって閉館する青山劇場、ゆかりのトップダンサーたちによる最終公演
Aoyama Ballet Festival -Last Show-
「ロミオとジュリエット」よりバルコニーのパ・ド・ドゥ

振付:篠原聖一
出演:下村由理恵 佐々木大
日時:2015年1月29日(木)・30日(金) 18:30開演
会場:青山劇場
チケット料金:全席指定 S席9,000円 A席7,500円 前売11/15(土)~
お問合せ:青山劇場・青山円形劇場 TEL:03-3797-5678
http://www.aoyama.org


アリオス・バレエシアター2014
演出・振付:下村由理恵 新作(オーディション参加者によるパフォーマンス)
日時:2015年2月15日(日) 15:00
会場:いわきアリオス 大ホール
チケット料金:全席指定 1,500円 中学・高校生500円 他 前売11/16(日)~
お問合せ:アリオスチケットセンター TEL:0246-22-5800
http://iwaki-alios.jp


都民芸術フェスティバル 日本バレエ協会「コッペリア」全幕
原振付:マリウス・ブティバ
改定振付:セルゲイ・ヴィハレフ
出演:下村由理恵(スワニルダ) 芳賀 望(フランツ)
日時:2015年3月7日(土) 18:00開演
会場:東京文化会館 大ホール
チケット料金:全席指定 S席10,000円 A席8,000円 B席6,000円 C席4,000円
お問合せ:公益社団法人日本バレエ協会 TEL:03-5437-0371
http://www.j-b-a.or.jp/


Performance stage 天満天神バレエ&ダンスフェスティバル2015 東京公演
日時:2015年4月4日(土)
会場:品川きゅりあん大ホール
チケット料金:前売5,000円 当日5,500円 前売1/8(木)~
お問合せ:パフォーマンスステージ事務局 TEL:03-6351-5224
http://tenmatenjin.com/


プレミアム・ダンス・ガラ
芸術監督:西島数博
出演:下村由理恵 ほか
日時:2015年4月23日(木)・24日(金)
会場:メルパルクホール・東京
チケット料金:SS席:10,000円 S席:8,000円 A席:6,000円 B席:4,000円
お問合せ:J.D.I. TEL:03-6659-5191
http://www.jdancei.com


林 愛子 (インタビュー、文)
舞踊評論家 横浜市出身。早稲田大学卒業後、コピーライター、プランナーとして各種広告制作に関わる。そのかたわら大好きな劇場通いをし、'80年代から新聞、雑誌、舞踊専門誌、音楽専門誌などにインタビュー、解説、批評などを寄稿している。